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    中国通史で辿る名言・故事探訪(覆水は定めて収め難し)

      「覆水は定めて収め難し」

                         殷王朝末期

       「覆水盆に還らず」とも。

       水盆から大地にこぼれ落ちた水は、再び元の盆に戻すことは

      出来ない。

       本義は、一度離婚してしまった夫婦は、再び元の鞘に復し難い

      ことの喩え。

       現代では、一度やってしまったことは取り返しがつかないことの喩え。

       殷王朝の末期のことである。

       太公 初め馬氏を娶る。書を読みて産(家産)を事とせず。

       馬氏去るを求む。 

       太公即ち太公望呂尚は、その生涯の長い期間を読書に励み、家業は

      全く顧みなかった。

       そして時には全国の各地を経巡り、時世を待っていた。

       だが妻の馬氏は、遂にそのような夫に愛想をつかして、その下を

      去った。 

       それから幾星霜が経ったが、呂尚は周王朝の顕官となり斉の国に封ぜ

      られた。

       その事を聞きつけた元の妻は、呂尚に復縁を懇願した。

       太公 水一盆をとり地に傾け、婦をして水を収めしむ。唯 其の泥を

      得たり。

       (=呂尚は元の妻の前で水鉢を手にして地に傾け、馬氏に地中に

        こぼれ落ちた水を戻させたが、ただ水を含んだ泥を得ただけで

        あった。)

       太公曰く、

       「若(もし) 能く離れて更に会う、覆水 定めて収め難し」と。

       (=お前はよくも一度離れて行きながら、再び一緒になろうなどと

        言うが、覆水は元に戻せないのだ。)

                 前秦の時代  王嘉の撰「拾遺記」鶡冠子注




       前秦より後の世 前漢の朱買臣は、若い頃は家が貧しくとも

      日夜 学問に励んでいた。

       山に行っては薪を背負いて読書するほどであったが、妻は貧しさの

      故に夫の下を去る決心をした。

       朱買臣は妻を慰留しようとした。

       「私は五十歳になったら、必ず富貴となろう」と。

       それに対して妻は、

       「あなたに従っていたら、遂には餓死してしまうでしょう」と言って、

      去ってしまった。

       それから幾星霜の後、朱買臣は大器晩成型の出世をして、朝廷の

      顕官となり生地である会稽郡の太守にまで出世した。

       ここに於いて彼は元の妻と再会したが、彼女は貧しい生活をしており、

      そこで朱買臣に復縁を求めた。

       朱買臣は何くれとなく彼女の面倒を見ていたが、元の妻の願いには、

       「覆水は再び良く収めず」と言って応じなかった。

       悲観した元の妻は、それから1カ月後 自ら首を括って死んで

      しまった。

                      「故事成語考・注」

       ※  如上の二つの伝説をもとにして、「覆水、盆に還らず」

         の格言が出来たとも言われる。

        

       

       

    テーマ : 中国古典・名言
    ジャンル : 学問・文化・芸術

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    中国通史で辿る名言・故事探訪(道のある所、天下之に帰す)

      「道のある所、天下之に帰す」

                         殷王朝末期

       ある日、周の君・西伯昌と太公望呂尚が治国の方策について語り

      合った。

       その内 太公望は西伯昌から “天下掌握の方策” を問われた。

       太公望 語って曰く、

       「凡そ人は死を悪(にく)みて生を楽しみ、徳を好みて利に帰す。

       良く生利をするものは道なり。

       道のある所、天下 之に帰す」と。

       即ち天下は万民と共にあり、天下の利は君主と万民が与に共有

      すべきものである。

       これをもたらす君主は「仁」であり、人民の困窮を救うのが「徳」と

      言える。

       そして人民と喜怒哀楽を共にすることが、「義」であるといえる。

       仁・徳・義を全うするのが君主の道であり、道のある所 自ずと

      万民は天下に従う。 

               太公望呂尚編  「六韜(りくとう)」文韜篇

        ※ 六韜とは古代の兵法書で、文韜・武韜・竜韜・虎韜・

          豹韜・犬韜の六巻から成る。

           太公望の著とされるが、その成立は魏晋時代である。

    テーマ : 中国古典・名言
    ジャンル : 学問・文化・芸術

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    中国通史で辿る名言・故事探訪(獲るところ覇王の輔ならん)

      「西伯昌と太公望の出会い」

                           殷王朝時代末期

       

       諸侯国の君の西伯昌が、或る日のこと狩猟に出ようとして、之を

      占ったところ、次のような卦が出た。

       「獲るところ龍に非ず彲(ち)に非ず、虎に非ず羆(ひ)に非ず、

      獲るところ覇王の輔ならん」と。  

         ☞ 彲とは、蛟龍(みずち)のことで、蛇に似た水生の生き物。

            羆は、ひぐま。
      猟に出かけてみると、果たして渭水の陽(きた。=北)で釣糸を垂れる

     呂尚に邂逅した。

      西伯昌が声をかけると、呂尚は釣りに譬えながら政治の彼是について

     自論を展開した。

      意を得た西伯昌は共に語り、且つ感動し大いに喜んだものである。

      そして西伯昌は言う、

      「我が先君太公(祖父の古公亶父)より曰う、

      『当に聖人有りて周に適(行)くべし。周 因りて以って興らん』 と。

      子は真(まさ)に是(これ)か。

      我が太公、子を望むこと久し」と。

      故に之を号して、太公望と曰う。車に載せて与に帰る。

      立てて師と為し、之を師尚父(ししょうほ)という。

        ※ 太公とは、王朝の創建後に王朝の始祖として崇めて

          付けられる諡号。

           尚 古公亶父の古公は号であり、名は亶父という。

                          「十八史略」三代・周武王
       

    テーマ : 神話伝説逸話
    ジャンル : 学問・文化・芸術

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    tyouseimaru

    Author:tyouseimaru
    出身地は四国八十八か所参りの発心の阿波、大阪を終の棲家とする。
    歴史好きで、城郭・神社仏閣・歴史遺跡巡りが趣味となる。
    歴史小説や時代小説を好み、往年の著名な時代小説の類は概ね完読と、自負している。

    自薦
    自著「中国通史で辿る名言・故事探訪」の 上・中・下の3巻を、 近い内に「電子書籍」での出版を予定しています。 今年一年間は、さらに工夫を加えるなどして、補記訂正などの校正を第一義としています。       
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