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    中国通史で辿る名言・故事探訪(楚の荘王の賢夫人)

     「賢は忠に劣る」

                        春秋(東周)時代

      賢いばかりが能ではない。君に忠誠こそが肝要という意。

      楚の荘王には樊姫(はんき)という賢夫人がいた。

      非常に賢明で心優しく、しっかり者で陰になっては楚王を励まし

     続けた。

      荘王は狩猟を大いなる楽しみとして、ややもすると執着する傾向が

     あったので、何時かはこれを止めさせようと考えていた。

      そしてある時、遂に荘王に意見を呈した。

      「生あるものは天与のものです。これを殺すのは天道に外れましょう。

     また時の浪費でもあります」と。  

      だが荘王は、一向に耳を傾けようとはしなかった。

      そこで樊姫はこの時から、禽獣の肉を一切口にしなくなった。

      このことを知った荘王は、きっぱりと狩猟を止め政治に大いに専念する

     ようになった。

      また荘王が大分 遅くなってから執務室を退出し、宮室に戻った。

      樊姫は王を迎えながら、

      「遅くまでご苦労様でした。お疲れではございませんか」と尋ねた。

      王は機嫌よく、
     
      「今日は賢者と思う存分 語り合ったので満足して居る。反って日頃

     の疲れが吹き飛んでしまった」と。

      樊姫は尋ねて、

      「賢者とはどなたのことですか」と。

      王は得意げに言う、

      「宰相の虞丘子」だと。

      それを聞いて樊姫は、口を覆いながら笑い出した。

      王は怪訝に思い、

      「何が可笑しいのか」と聞き返した。

      「虞丘子が賢者であることは確かでありましょうが、所詮は賢者だけ

     のことであって、王様に対して忠臣という訳ではありません。

      わたしは王様にお仕えして、もう十一年になりますが、その間 王様

     に心から尽くす人物を探し求めて多くの人を推挙してまいりました。

      それというのも王様に多くの人々を見てもらい、その能力を発揮させ

     て、少しでも良い政治を行って頂きたいからです。

      それなのに虞丘子が宰相として十年も居りながら、推挙する人物は

     皆 自分の子弟か親戚の者だけです。またその子弟に愚者がいても、

     これ退けることをしません。

      虞丘子が賢者であっても、その事が反って王様の賢明さを隠しており、

     これは不忠の臣にさえなると思うのです。

      私が笑ったのは、そういう訳でございます」と。

      荘王は樊姫の聡明さに非常に驚き、後日 虞丘子を呼んで樊姫の

     言ったように、

      「賢というのは忠に劣るものだ」ということを告げた。

      その翌日から、虞丘子は進んで謹慎の意を表して出仕しなくなった。

      それから数日して、孫叔敖(そんしゅくごう)が令尹(他国では宰相)に

     任ぜられた。

                        「史記 楚世家」

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     「拾遺・弥縫」

     「説苑 楚・至公」より

      楚の荘王夫人の樊姫は、令尹・虞丘子を不忠といい、政治的無能

     を言い立てて人事の刷新を薦めるが、「説苑」では、虞丘子を荘王を

     覇者にした有能な賢臣として説き、彼は後 自ら孫叔敖を楚の後任

     として推挙したと記す。

      虞丘子は言う、

      「いつまでも禄にかじりついて離れないのは貪欲と申します。

      賢者を推薦しておきながら、その能力を発揮させないのは欺瞞と

     申します。

      他人に地位を譲らないのいは、清廉とは申せません。

      臣下にして主君に忠誠でないとしたら、王がそれを忠臣とするわけ

     にはいかないでしょう。ですからどうか、きっぱりと辞めさせて戴きたい」

     と辞任を申し出た。

      荘王もこれを聞き入れて、虞丘子に三百畝の宰邑地を下賜し、彼を

     名付けて、「国老」と呼ぶことにした。

      孫叔敖が代わって令尹に任ぜられた。





      
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    テーマ : 中国古典・名言
    ジャンル : 学問・文化・芸術

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     河野長生   tyouseimaru

    Author: 河野長生 tyouseimaru
    出身地は四国八十八か所参りの発心の阿波、大阪を終の棲家とする。
    歴史好きで、城郭・神社仏閣・歴史遺跡巡りが趣味となる。
    歴史小説や時代小説を好み、往年の著名な時代小説の類は概ね完読と、自負している。

    自薦
    自著「中国通史で辿る名言・故事探訪」の 上・中・下の3巻を、 近い内に「電子書籍」での出版を予定しています。 今年一年間は、さらに工夫を加えるなどして、補記訂正などの校正を第一義としています。       
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